神戸の県庁近くにある 竹中大工道具館に行ってきました。
この博物館は1984年、竹中工務店創立の地である神戸市中央区に開館し、2009年にリニューアルオープンしました。
博物館としてはこじんまりとした建物で、展示は一階から三階、地下一階にはライブラリーとセミナー室があります。
ボランティアガイドの方がいらっしゃったので、案内をお願いしました。
窓口でチケットを買って中に入ると、最初に目に入るのが法隆寺五重塔の模型。
奈良の鵤(いかるが)工舎を設立した宮大工の小川三夫さんが、二十代の頃に作ったものだそうです。
順路は3階から1階へ降りていく形をとりますので、ここは後の楽しみに取っておきましょう。
3階のテーマは「伝える」で、石斧の時代から近代にかけての道具の歴史、
世界各国の道具も展示されています。
面白かったのは、中国の鉋(かんな)は押して削り、日本のは引いて削るということ。
大陸から鉋が伝わった当初は、日本でも押して使う鉋が主流だったのですが、ヒノキなど柔らかい木を使うことが多い日本建築では、あまり力の必要ない引く鉋に改良されたのだそうです。
鉋といえばあの薄い削り屑が思い浮かびますが、なんと削り屑の薄さを競う「削ろう会」とい大会があり、優勝者は3ミクロンという薄さで木を削ることができるらしいのです。
優勝者のものではありませんが、実際に削り屑を見せて頂きました。
もはや木というより、ティッシュと言った方がふさわしいくらいの薄さ。
使用者の技術はもとより、鉋の刃、台にも極限の調整が必要です。執念を感じます。
削ろう会全国大会は今年9月に埼玉県川越市で二日間にわたって開催される予定です。
実に興味のそそられる大会です。
2階のテーマは「造る」。建物づくり、そして道具づくりについての展示です。
江戸から明治にかけて発布された廃刀令によって、刀鍛冶がこれまで下に見られていた道具鍛冶への転身を余儀なくされ、その卓越した技術を大工道具づくりに生かすことで名工といわれる人々が生まれてきました。
皆さん、大工道具で一番高価なものはなんだと思いますか?
実は刃を研ぐための砥石なのだそうです。良いものだと数十万円することもあるそうな。
京都にある秘密の山から地層の中に埋もれた砥石を採掘してくるのだそうです。
そして1階のテーマは「極める」。名工と呼ばれた人たちの作った道具が展示されています。
千代鶴是秀という方の作る鑿(のみ)は、ひと揃い3円程度の時代に100円もの値がついていた、
まさに究極の一品。
抑えめな照明に照らされて、刃先が妖しい輝きを放っていました。
ここで最初に見た法隆寺五重塔の模型を、もう一度じっくり見学します。
地下一階はライブラリーとセミナー室で、定期的に講座が開かれているようです。
私が行ったときには「古代東アジアの木塔について」というセミナーが開かれていました。
案内をお願いした場合の所要時間はおよそ1時間。
最初に「どのくらいお時間ありますか?」と尋ねられたので、
時間に関しては柔軟に対応して頂けるかもしれません。
大工さんたちへの敬意と情熱が溢れるガイドをして頂き、展示や映像資料を見ていると目の奥が熱くなってきました。
大工道具の歴史、実際に使用されている時の映像など、数千年にわたって木と共にあった日本建築を支えてきた大工たちの魂に触れられる体験でした。
館内は個人的利用に限って写真撮影可能です。ブログなどへの掲載はご遠慮下さいとのこと。
お近くにお越しの際は、是非足を運んでみて下さい。
財団法人 竹中大工道具館
〒650-0004 兵庫県神戸市中央区中山手通4-18-25
Tel. 078-242-0216 Fax. 078-241-4713
【開館時間】 9:30~16:30 (入館は16:00まで)
【休館日】 月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月26日~1月7日)
【入館料】 一般300円 大学生・高校生200円 小学生・中学生100円
[0回]
PR
http://shinq.blog.shinobi.jp/Entry/74/大工道具の博物館「竹中大工道具館」