タイトルをご覧になって、どんな本を想像しただろうか。
「○○の病気には、▲▲のツボを押すと良い」といったことが書かれていると思ったのではないだろうか。
そして、「ツボ押し健康法ならネットにいくらでも載ってるし、雑誌の記事でもよく見かけるから、いまさらね…」と、感じたかもしれない。
上のような印象を抱いた方にこそおすすめする本である。
本書は、そういった第一印象を、確実に裏切る。
「ツボ刺激による自己ケア」と銘打ちながら、よく知られる「百会」や「合谷」、「足三里」といったツボの名前も出てこない。そもそもツボとは押すものですらない。では、どうするか。
サブタイトルの「皮膚から検索」というのがその答えだ。
私たち鍼灸師が患者さんたちに提供しているのは、単に体をスッキリさせたり、一時的な苦痛を取り除くための治療ではない。
それは、鍼や灸、深い医学の知識がなくても、自分の身の回りの人たちを幸せにすることのできる「手当て」の知識なのである。少なくとも私はそう考えている。
これからは間違いなく税金だって保険料だって医療費の負担額だって、どんどん上がっていくのだ。
誰だって、できるだけ病院の世話にならず、いつか必ず訪れる最期の日まで笑って生きていたい。毎晩「今日も生きてて良かったな」と思いながら、目を閉じたい。
自分の口で好きなものを食べたいし、好きなところに自分で行きたいし、読みたい本、見たい映画、会いたい人だってたくさんいる。
だが、それはただ漫然と日々を過ごし、なんとなく体に良さそうなことをしてみたり、話題の健康食品を食べているだけでは、届かないものなのだ。
そのことに、もうみんな薄々感づいているはずだ。
でも、いくら普段からのケアが大事だからといって、鍼のことはよく知らない人が多いし、第一身の回りに鍼灸師という職業の人は極めて少ないのが現実だ。
治療院に行くのだってタダではない。だからこそ、自分自身で健康を手に入れる必要がある。
そもそも歯は毎日2度も3度も磨くのに、なぜ体はほとんどの人がほったらかしなのか。
自分の体から発せられているサインに応えれば、健康は自分の手でたぐり寄せることができる。
そして、その方法は、それほど難しくないことがわかる。
本書には、頭痛から心臓の病気、不妊に至るまで、およそ生きていれば誰もが経験したり、見聞きしたりする病気に立ち向かうための知識が、これでもかとばかりに盛り込まれている。
必要なのは、自分の手だけだ。
本書は、反応点治療研究会の鍼灸師たちが、神経生理学に基づく治療理論によって、膨大な数の患者さんたちを救ってきた実践から生まれた渾身の一冊である。
「どこか調子が悪い、何かヘンだ…」、はなぜ起こるのか。
「触れるだけでわかる」私たちが、体の中にある何を見ているのかがわかって頂けるはずだ。
自分の体でも、パートナーの体でも、そんなことができると想像すれば、ワクワクしてこないだろうか。
驚きながら、楽しみながら、自分でできて、一生使える手当ての技術がわかれば、「生きていて良かった」と思える日がきっと増えるだろう。
本書を片手に、もう片方の手で自分の肌に触れてみよう。
「健康で生きていることさえできれば、あとはどうにかなる」
少し乱暴かもしれないが、私が鍼灸師になった理由の一つだ。
自分の体はもちろん、その手の届く限り、周囲の大切な人たちを守ることができれば、どんなに厳しい時代になっても笑って暮らしていけると信じている。
もちろん、内容についての質問、相談も大歓迎である。
河村廣定・著
(遠見書房 2012年 税込2,100円)
出版社のサイトでまえがきを読むことができます。
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