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牛歩庵―鍼灸師・中国語医療通訳/翻訳者のblog

「鍼灸はなんで効くの!?」「ツボって何?」

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神戸で鍼灸のセミナー開催

3/2(土)、神戸市内で開催された鍼灸のセミナーで、親友の戴さんとともに講師を務めました。

鍼灸が体に作用する生理学的原理から、古代中国で医学が発生した文化的背景まで広くお話をさせて頂きました。

鍼灸はいまだにその原理のすべてが解明されているわけではなく、欧米では科学研究が盛んに行われています。
向こうでは「経絡」や「ツボ」といった予備知識がない分、先入観なく「具体的に何が起こっているのか」を見極めようという意識が強いのだと思います。

私も治療ではいわゆる「東洋医学理論」は使いません。しかし、奈良時代頃から流入し続け、明治維新直後まで日本の正統医学であり続けた「東洋医学」が日本人の文化、身体観に与えた影響はとうてい無視できるものではありません。

例えば、今でもよく使う「中風(脳卒中)」、「破傷風」、「痛風」などの「風」とは中国医学の「風(ふう)」の概念を由来とするものですが、はるか昔に受け入れた古代中国医学の概念は、ここ日本でどのように受け入れられ、変容し、現代に至っているのでしょうか。

近代以降、日本は漢語を利用して西洋医学(だけでありませんが)の概念を翻訳し(例えば現代中国語でも使われる「神経」という語は日本人の発明した漢語で、「神」「経」はともに東洋医学の概念です)、それが近代化を目指す中国に「輸出」されることになりました。

現代の日本と中国は、お互いの国で生まれた概念を相互に利用しあっているわけです。
最近私は日本と中国の医学交流史に関心があり、もう少し深く研究してみたいのですが、まずは上に挙げたような語彙論的アプローチがとっかかりになるのではないかと思っています。

セミナーの様子.jpg


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【医療通訳にご関心をお持ちの方へのお知らせ】

神戸市看護大学にて、病院での通訳の現場に立たされる子どもをテーマとしたフォーラムが開催されます。

ご興味のある方はぜひご来場下さい。

神戸市看護大学 第14回国際フォーラム 「通訳を担うこどもたち―医療とコミュニケーション」 

開催日時 2012年12月8日(土) 開演14:00~17:00 (受付開始13:30~)

会場 神戸市看護大学ホール

親がろうあ者で言葉が話せない、あるいは外国出身で日本語がわからない、 そのような場合、通訳の負担はこどもたちにかかってくることがあります。

家族が医療施設を受診するとき、こどもたちは学校を休んで病院に付き添うこととなります。
さらに家族の苦しさを聞き、医療者に説明しなければなりません。
深刻な病状や診断を親に伝えなければならないときもあるでしょう。
医療や教育の現場ではこのような状況をどれだけ認識し、 こどもたちへの配慮をしているでしょうか?
今回は、こどもたちが医療現場での通訳という役割を担うことに伴う問題と対応について、さまざまな経験を重ねてこられた方々をお迎えして、皆さんと一緒に考えたいと思います。

医療や教育に携わる方々 はもちろん、このような課題に関心をお持ちの一般の方々のご参加を期待しております。

基調講演:リリアン・テルミ・ハタノ氏(近畿大学総合社会学部 准教授)

シンポジスト:
新免 修 氏(相談員・手話通訳士)
柿内 ディアナ氏( NPO伊賀の伝丸 伊賀市相談員)
トラン・ティ・アン・ホン氏(難民事業本部関西支部ベトナム語通訳)

コメンテーター: 新垣 智子 氏(りんくう総合医療センター看護師 医療通訳研究会看護部会代表)

司会:植本 雅治 氏(神戸市看護大学 教授)

*すべてのプログラムで手話通訳があります。

*公共交通機関をご利用ください (神戸市営地下鉄学園都市駅下車 徒歩10分)

共催:医療通訳研究会(MEDINT)

参加費 1,000円 (当日会場にてお支払いください)

参加申込方法 往復ハガキまたはEメールにて、「国際フォーラム 」と明記の上、住所、氏名(ふりがな)、電話番号、を書いてお申し込み下さい
(複数人数でのお申し込みの場合は全員の氏名をご記入ください)。

*申し込みの締め切りは2012年11月30日(金)必着とさせていただきます。
なお、定員(500名)を超える場合は抽選となります。

ちらしは http://medint.jp/wp-content/uploads/2012/11/f44db717c177cf0c0698aa6175756d80.pdf

【申し込み・問い合わせ先】
〒651-2103 神戸市西区学園西町3-4
神戸市看護大学 「第14回国際フォーラム」事務局
TEL:078-794-8080(代)
E-MAIL:office@tr.kobe-ccn.ac.jp http://www.kobe-ccn.ac.jp/

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逆水行舟

中国語に、

「学如逆水行舟、不進則退」
(学問は水の流れに逆らって舟を進めるようなもの、進まなければ退歩する)

ということわざがあります。

普段臨床の現場で治療をしていると、同じことが健康管理についても言えるなあと感じます。

治療とは水の流れに逆らって舟を進めるようなもの、進まなければ…

というわけですが、勉強とは違って、人がこの世に生まれてから否応なく乗せられているこの流れの終着点は「死」です。

程度の差こそあれ、誰もこの流れには逆らうことができないし、皆に等しくやってきます。

しかも、難しい病気にかかってしまったら、流れに逆らうことは極めて困難になります。同じ所にとどまっておくのがやっと、という場合も珍しくありません。

それでも、鍼一本、灸一つまみを櫂(かい)にして、木の葉のように脆い舟で激流を漕いでいかなければならない。どんな優秀な漕ぎ手でも、いつかは激流の終着点に来てしまう。

学問とは、永遠に目的地に辿り着くことのできない船旅であり、
健康づくりとは、いつかは流れの終着点に辿り着いてしまう船旅なのでしょう。

終着点までの旅路の間、少しでも美しい風景に気づけるように、旅の道連れのいる喜びを感じることのできるよう、岩にぶつかってしまわないよう、上手く竿を差すのが私たちの仕事なのだと思います。


(遠見書房 2012年 税込2,100円)

反応点治療の考え方、治療法、自宅でのケアが学べる書籍です。

出版社のサイトでまえがきを読むことができます
 

ハイネケンのネオンサイン

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道具のはなし・鍼(3) 鍼は使い捨て

よく「鍼は使い捨てですか?」という質問を受けます。

今ではほとんどの治療院で使い捨て(カタカナで「ディスポーザブル」といいます)の鍼が使われています。
もちろん、私も使い捨ての鍼を使っています。
IMG_1034.jpg
一本ずつ鍼管つきでパックされているもの、複数本まとめてパックされているものなどがあります。手前の短い鍼は顔用のものです。

使用した鍼はすぐに専用のケースに廃棄して、医療廃棄物として業者さんに引き取ってもらいますので、他の患者さんに使うことはありません。

また、病院で使用する注射針は液体を注入するために筒状になっています。ちょうど日本刀で袈裟斬りにした竹のような形状をしています。

一方、鍼灸治療ではもちろん液体を注入することはありません(たまに「何か薬を注射するのですか?」と質問されますが…)。その分細く注射針よりも細くできています。

ちなみに、世界一の職人として有名な岡野工業の岡野雅行氏が開発した「痛くない注射針」の直径は0.2ミリ、私が普段使用する鍼は0.16ミリ(1番)です。

つまり、鍼灸の鍼は理屈上、「『痛くない注射針』より痛くない」のです(正しく打てばの話ですが)。

注射針で針刺し事故などがあると危険なのは、内部に血液などが残っている可能性が高いからです。

空洞がなく、注射針より細い鍼灸用の鍼は、相対的に感染性物質が残りにくい構造となっています。

もちろん、リスクがあることには変わりありませんので、私たち施術者も、治療に使用した鍼の取り扱いには細心の注意を払わなければなりません。


(遠見書房 2012年 税込2,100円)

反応点治療の考え方、治療法、自宅でのケアが学べる書籍です。

出版社のサイトでまえがきを読むことができます
 

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道具のはなし・鍼(2) 鍼管(しんかん)

いくら鍼灸師がキレイなウェブサイトを作って「痛くないです!安全です!」「効きます!」と叫んでみたところで、あやふやな情報では実際に治療院でどのようなことが行われているかを判断する材料にはなりません。

正しい操作、道具を使う限り、安全であることは間違いないのですが、「安心」を連呼するだけで本当に安心することはできません。それで安心してしまう人はどこかで安心じゃないものを掴まされるのではないでしょうか。

「私たちはこういうことをしています。こんなものを使っています」、という情報を提供し、その上で安心かどうか、希望を感じるかどうかを判断してもらうべきだと思うからです。

ですから、私はできるだけ、結論ありきで「安全です」「痛くないです」「効果あります」とアピールするのではなく、これらの目的を達するためにこういう工夫をしています。
という実情をお伝えし、あとは患者さんに判断を委ねたいと思います。


そのような目的で、鍼灸の基礎の基礎から学ぶためのシリーズ記事を書くことにしました。縁あって当ブログに来て頂いた患者さん、あるいは鍼灸に興味のある方の参考になればと思います。


今回は、鍼の女房役、鍼管(しんかん)のご紹介です。

治療を受けたことがある方なら、何か管のようなものに鍼を入れて打っているのを見たことがあるかもしれません。実は日本独自の道具で、鍼灸の生まれ故郷中国では、使わない道具です。

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これが鍼管。ステンレス製です。先の方から少しだけ鍼の先端が覗いているのが見えるでしょうか?

鍼を打ちたい場所にこの鍼管を押し当てて、指を使ってリズミカルに叩きます。
そうすると、鍼の先端が一瞬で皮膚を通過し、痛みを感じにくくなるのです。
「叩き込むなんて、恐ろしい…」と思われるかもしれませんが、鍼をじわじわと皮膚にねじ込んでいくよりも、目にも留まらぬ速さで入れてしまう方が痛くならないのです。

なぜかというと、人間の皮膚で、痛みを感じる神経の先端(「受容器」といいます)が一番たくさん集まっているのは、最も外側だからです。なぜでしょうか。

皮膚は外傷を一番に察知しなければなりませんから、体外から来る危険はできるだけ早く知らせなければなりません。
外から来た異物が体内に入ってしまえば手遅れになる可能性があります。そのため、一番外側の感度を高くして、体内への侵入に備えているのです。

いくら治療が目的だからといっても、鍼とて身体にとっては異物にほかなりません。
ですから、痛みをできるだけ出さないためには、この一番外側のエリアを一瞬で通過させる必要があるのです。

一度鍼が体内に入ってしまえば、刺されるような刺激痛はほとんど起こりません。代わりに、鈍い、ズーンと来る感覚が起こることがあります。

中医学の鍼灸など、この「ズーン」を積極的に誘発させる考え方の治療もありますが、身体への負担も強く、苦手とされる方もおられますので、私が行なっている反応点治療では、これはあまり重視しません。

もちろん「これがないと受けた気にならん」という鍼マニアの方もおられますので、積極的に誘発させることもありますが…


ちなみに、鍼には一本一本パックされているものがあり、そのような鍼にはプラスチックの鍼管もセットでついています。
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赤い透明の鍼管。鍼が透けて見えます。

こちらは使い捨てで衛生的ではあるのですが、肌への「当たり」があまり良くありません。皮膚に押し当てたときに、人によっては痛く感じることもあるので、私はあまり使わず、封を切ってそのまま廃棄することが多いです。
どうしてもこれしかない場合は、ライターで先を少し炙り、皮膚にあたる部分を丸めてから使用します。先輩の鍼灸師に教えてもらったテクニックです。

ちなみに、ステンレス鍼管は使い捨てではありませんが、一人の患者さんの治療が終われば洗浄し、オートクレーブという機械で高圧蒸気滅菌を行います(「殺菌」ではなく「滅菌」です)。

もちろん、この鍼管を使っているからといって、痛みがゼロにできるわけではありません。ちなみに、鍼を打つときの痛みを「切皮痛(せっぴつう)」といいます。

痛みを最小限にとどめる原理を理解し、鍼を打つ部位に応じて角度や力加減、立ち位置も調整しますし、痛みに対する患者さんの感受性も考慮する必要があります。このあたりのコツが、なかなか文字ではお伝えできない部分なのです。



さらに詳しく(■は現在のページ)
道具のはなし・鍼(1) 鍼のサイズ
道具のはなし・鍼(2) 鍼管(しんかん) 


(遠見書房 2012年 税込2,100円)

反応点治療の考え方、治療法、自宅でのケアが学べる書籍です。

出版社のサイトでまえがきを読むことができます
 

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プロフィール

HN:
岡本悠馬
性別:
男性
職業:
鍼灸師・中国語翻訳者/医療通訳・講師
自己紹介:
神戸市須磨区妙法寺・南天はり灸治療院の院長・中国語翻訳者です。
2007年~2009年まで在外公館派遣員として中国上海に勤務。現在は翻訳者として活動しています。鍼灸では神経生理学に基づく治療を行います。反応点治療研究会所属。神戸市外国語大学非常勤講師。

手がけたもの:政治、軍事、経済、医薬、ソフトウェア取扱説明書、料理、紀行文、芸術展パンフレット、観光案内、中国語学習教材、古文(唐詩・宋詞など)、現代小説等。

メールアドレス:
okamotoyum★gmail.com(★を@に変えて送信)

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