翻訳者は心配しなくていい。
なぜなら、決してできない仕事はないからだ。
「火星まで8秒で行けるロケットを作って下さい。3LDKバストイレ付きで」
といわれても、世界中の英知を結集してあと200年くらいかかることだろう。
8秒で火星に行けるロケットに風呂やトイレが必要なのかは別として。
翻訳者の前に出される課題は、すでに完成している。
誰かがどこかで、意図をもって作り出した作品である。
無から有を生み出すのではなく、有から有へ。
あとはそのネジを外し歯車を取り出し、徹底的に分解してから、もう一度自前の材料で同じ物を組み立てればいい。
もちろん自前でなくてもいい。
材料は借りてきてもいい。書店に並んでいる辞書、専門書は、部品セットなのだ。
友達にもらったものでも構わない。頑丈な部品であることさえ確認できるのなら。
材料はソコココに転がっている。
8秒ロケットを作るのに、本棚を組み立てて余ったネジは使えない。
同じ絵柄のジグソーパズルが二セット。
ピースの形はバラバラだから、両者を混ぜてはいけない。
無理矢理つなぎ合わせると、なんかズレている。
二つをきっちり組み上げると、最終的に出来上がる絵(=情報)は、同じになる。
「ある言語で表現できることは、絶対に別の言語でも表現できる」
その原則を、どこまでも信じ続けることができるなら、翻訳者に恐れるものは何もないのだ。[0回]
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