3/2(土)、神戸市内で開催された鍼灸のセミナーで、親友の戴さんとともに講師を務めました。
鍼灸が体に作用する生理学的原理から、古代中国で医学が発生した文化的背景まで広くお話をさせて頂きました。
鍼灸はいまだにその原理のすべてが解明されているわけではなく、欧米では科学研究が盛んに行われています。
向こうでは「経絡」や「ツボ」といった予備知識がない分、先入観なく「具体的に何が起こっているのか」を見極めようという意識が強いのだと思います。
私も治療ではいわゆる「東洋医学理論」は使いません。しかし、奈良時代頃から流入し続け、明治維新直後まで日本の正統医学であり続けた「東洋医学」が日本人の文化、身体観に与えた影響はとうてい無視できるものではありません。
例えば、今でもよく使う「中風(脳卒中)」、「破傷風」、「痛風」などの「風」とは中国医学の「風(ふう)」の概念を由来とするものですが、はるか昔に受け入れた古代中国医学の概念は、ここ日本でどのように受け入れられ、変容し、現代に至っているのでしょうか。
近代以降、日本は漢語を利用して西洋医学(だけでありませんが)の概念を翻訳し(例えば現代中国語でも使われる「神経」という語は日本人の発明した漢語で、「神」「経」はともに東洋医学の概念です)、それが近代化を目指す中国に「輸出」されることになりました。
現代の日本と中国は、お互いの国で生まれた概念を相互に利用しあっているわけです。
最近私は日本と中国の医学交流史に関心があり、もう少し深く研究してみたいのですが、まずは上に挙げたような語彙論的アプローチがとっかかりになるのではないかと思っています。
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